IRODORI
2026-10-09業界のしくみ

住宅ローン金利が上がっているのに、毎月の支払い額が変わらないのはなぜ?

住宅ローン金利が上がっているのに、毎月の支払い額が変わらないのはなぜ?

「金利は上がっているのに、うちの返済額、まだ全然変わっていないんですよね」。最近、こういう声を聞くことが増えました。2026年9月、日銀の政策金利は1.25%まで引き上げられ、変動金利の住宅ローンもこれに連動して上昇しています。でも実際に家計簿を見ると、毎月の返済額自体はまだ据え置かれたまま、という方が大半です。これ、実は仕組み上当然のことなんですが、この「変わっていない」を「影響がない」と誤解してしまうと、数年後に思わぬ形でしわ寄せが来ます。

住宅ローンの返済額、実はすぐには変わらない仕組みがある

変動金利の住宅ローンは、金利自体は半年ごとに見直されます。しかし、毎月の返済額の見直しは5年に1度だけ、というルールがほとんどの金融機関で採用されています。これがいわゆる「5年ルール」です。

つまり、2026年に金利が何度上がっても、直近5年以内に返済額の見直しタイミングが来ていなければ、毎月の返済額の数字そのものは変わりません。「金利が上がっているのに、自分の返済額はまだ変わっていない」という違和感は、仕組み上正しい状態なんです。

ただ、これを「5年間は安心」と読み替えてしまうのは誤解です。変わらないのはあくまで「返済額という表示上の数字」だけで、その裏側では別のことが起きています。

「返済額が変わらない」の裏で、利息の中身は変わっている

毎月の返済額が一定でも、その内訳(元金に充当される分と、利息に充当される分の割合)は、金利が上がるたびに変わっています。金利が上がれば、同じ返済額の中で利息の占める割合が増え、元金の減りが遅くなります。

具体的な金額で見てみます。3,000万円を35年で借りた場合、金利が1%上がると、総返済額は約600万円増える計算になります。月々の負担に換算すると、約1.4万円分の利息を多く払っていることになります。返済額という「表示」は変わっていなくても、家計から出ていくお金の中身は、確実にこの分だけ悪化しているということです。

125%ルール、「上限で止まる」わけではない

もう一つ、誤解されやすいのが「125%ルール」です。これは、5年ごとの返済額見直しの際、新しい返済額が旧返済額の125%を超えないようにする、という上限ルールです。

ここで多くの方が誤解するのは、「負担が125%で頭打ちになる」という理解です。実際には違います。125%を超えた分の利息は消えてなくなるわけではなく、未払利息として繰り延べられる仕組みになっています。最悪の場合、毎月の返済額のほとんどが利息の支払いに充てられ、元金がまったく減らない、という状態にもなり得ます。

なぜ、ここまで楽観視されてきたのか

正直に言うと、ここ数年で住宅を購入された方のほとんどは、金利上昇そのもののシミュレーションをしていませんでした。これは無理もないことだとも思っています。日銀の利上げは、過去に何度も頓挫してきた歴史があるからです。2000年にゼロ金利を解除した際は、ITバブル崩壊と重なって景気が腰折れし、わずか半年後の2001年には再びゼロ金利に逆戻りしました。2006年の利上げも、「拙速だった」という評価が今も根強く残っています。

この歴史を知っている人ほど、「今回の利上げも、結局はどこかで頓挫するだろう」という感覚を持っていたはずです。実際、私自身も相談者に金利上昇シミュレーションを勧める際、5年間で0.25%程度の上昇を想定するのが、現実的かつやや慎重な水準だと考えていました。

ところが今回は様子が違います。2024年3月にマイナス金利を解除してから、2025年12月に0.75%、2026年6月に1.0%、2026年9月には1.25%と、2年半で1ポイント以上、着実に利上げが続いています。これを単純に5年に引き延ばすと、2ポイントを超えるペースです(もちろん、このペースがそのまま続く保証はなく、2000年・2006年のように利上げが途中で頓挫する可能性もあります。あくまで、ここまでの実績の大きさを示す数字です)。私が「慎重な想定」としてお勧めしていた0.25%という数字は、今思えばかなり甘かったと感じています。

金利上昇が不安なら、今すぐできること

ここまでの仕組みを踏まえた上で、実際に何をすればいいかを整理します。

まずやるべきは、ご自身の契約内容の確認です。5年ルール・125%ルールはすべての金融機関にあるわけではなく、商品概要説明書で有無を確認できます。このルールがない商品だと、金利上昇がそのまま返済額に反映されるため、影響はより直接的です。

次に、次回の見直しタイミングで返済額がどこまで上がりうるかを、ご自身で試算してみてください。借入残高×現在の金利で概算すれば、おおよその水準は把握できます(実際の返済額は元利均等返済の仕組み上もう少し複雑な計算になりますが、大まかな負担感をつかむにはこれで十分です)。その上で、**返済額が1.25倍になっても家計が回るかを確かめる「家計のストレステスト」**をしておくことをお勧めします。

固定金利への切り替えを検討する方もいらっしゃると思いますが、ここで一点注意が必要です。固定金利もすでに3%台まで上昇しており、「変動が不安だから固定に切り替える」という判断は、切り替え時点での金利差と諸費用を試算した上でないと、かえって損することがあります。固定への切り替えは「不安だから」ではなく、数字を比較した上で判断することをお勧めします。

手元資金に余裕があれば、繰上返済も有効な手段です。元金を減らしておけば、利息負担の増加幅そのものを押さえられます。ただし、繰上返済に回すか、手元資金を厚く持っておくかは、他のライフプラン(教育費や老後資金等)とのバランスで決めるべきで、繰上返済だけが正解とは限りません。

まとめ

「毎月の返済額が変わっていない」というのは、金利上昇の影響を受けていない、という意味ではありません。それは単に、仕組み上の見直しタイミングがまだ来ていないだけです。その間、利息の負担は確実に増え続けています。「変わっていないから大丈夫」ではなく、**「変わっていないからこそ、今のうちに確認しておく」**という考え方をお勧めします。