大規模マンション、隣の部屋はなぜ高く売れるのか?

マンション選びは「立地と仕様」とよく言われます。将来の売却まで意識して、周辺の他物件より少しでも良いスペックを選ぶのは、当然の判断だと思います。
ただ、これはあくまで「建物単位」の話です。実際に売却の相談を受けていると、もう一段別のレイヤーで「売れやすさ」が決まっていることに気づきます。それが、総戸数の多さです。
「大規模マンション=資産性が高い」という一般的な評判
大規模マンションは、共用施設が充実していたり、管理費・修繕積立金の按分負担が一戸あたり軽くなったりと、スケールメリットが語られることが多い物件です。知名度が高く、資産性が高いというイメージを持たれている方も多いと思います。
これ自体は、間違った情報ではありません。ただ、この評判は「建物全体」を見たときの話であって、「一室単位」で見たときの売れやすさとは、少し別の話なんです。
総戸数が多いほど、実は「自分自身が競合になる」
総戸数が300戸を超えてくるあたりから、そのマンション内で常時、複数の売り物件が並存する状態になります。低層階・高層階、南向き・北向き、価格、間取り、方角、眺望。買い手は、同じマンション名の物件をポータルサイトで横並びに比較できてしまいます。
マンション価格を日常的に気にして見ている方は、ここで一つの疑問に直面するはずです。「あの部屋は北向きなのに売れた」「あの部屋は低層階なのに、高層階より坪単価が高かった」。一見、矛盾しているように見える現象です。
これは決して例外ではありません。実務者として見ていると、方角や階数といった分かりやすいスペック以上に、間取りの使い勝手が価格を左右しているケースが多いんです。LDKの広さ、子供部屋の広さ、ウォークインクローゼットの有無。それから、マンション内での「立地」も効いてきます。エレベーターホールに近いか、共用施設に近いか。
実際、同じ棟内・同じ㎡数でも、部屋の希少性や間取りの使い勝手、方角によって、坪単価が10%程度変わることは十分にあります。「南向き高層階が一番良いはず」という単純な序列では説明がつかない価格差が、同じ建物の中で日常的に起きているんです。
つまり、総戸数が多いマンションで自分の部屋を売ろうとすると、隣の部屋、上の階の部屋、同じ階の反対側の部屋と、常に見えない形で比較・競争させられている状態になります。希少性がない、というのが、大規模マンションの売れにくさの正体だと感じています。
検討段階・売却段階で確認できるポイント
流動性、つまり「売りやすさ」を考えるなら、まずそのエリアで求められているニーズを踏まえる必要があります。単身世帯が多いエリアなのか、ファミリー世帯が多いエリアなのか。アクセスが多少悪くても、部屋の広さの方が評価されるエリアなのか。こうした需要側の傾向は、エリアによってかなり変わります。
私自身がマンションの売却をアドバイスする際は、正直、同一マンション内の坪単価実績はあまり当てにしません。それよりも、周辺エリアで同じような間取り・同じような条件の物件を調べ上げて、そこに共用部や主要施設との距離を掛け率として反映させながら、値付けの妥当性を組み立てます。
「同じマンションでこの単価で売れたから、この部屋もこの単価で」という理論は、大規模マンションでは正直あまり通じません。同じ建物の中にも、常に固有の条件差があるからです。
まとめ
大規模マンション=資産性が高い、という評判自体は間違っていません。ただ、それは建物全体を見たときの話です。総戸数が多いマンションほど、実は自分自身が競合になりやすい構造があるということを踏まえたうえで、検討・売却の判断をしてもらえたらと思います。



